口腔ケアで免疫力アップ!
神奈川歯科大学副学長の槻木恵一氏が執筆され、
日本歯科医師会ホームページに掲載されています。
新型コロナウイルス感染症が、世界中で蔓延し多くの人を苦しめています。最先端の科学によりワクチンや治療薬の開発が進んでいますが、まだ完成していません。そして、新型だけあって、わからないことも多数あります。このような時、大切なことは、これまでの経験を総動員して、感染しないために良いと考えられることは、何でも行うということです。マスクも初めは海外では推奨されていませんでしたが、今は誰でも必要なことを知っています。歯磨きなどの口腔ケアは、インフルエンザへの感染リスクを下げることがわかってます。この経験は大切であり、新型コロナウイルス感染症対策として、試す価値は十分あります。いま新型コロナウイルス感染症に対しても口腔ケアが大切だという直接的な証拠を多くの研究者が探していますが、もう少し待つ必要があります。
もう一つ大切なことは、歯周病を放置し重症化してしまうと、歯周ポケットという深い溝ができてしまい、プラークや舌苔のように細菌の温床ができてしまいます。歯周ポケット形成の原因となる歯周病原細菌は、さまざまな分解酵素を持ち、それを口腔内にまき散らし、ウイルス感染を進めてしまうことも分かってきました。
いま歯科医院は、高度な感染防止対策を行い、皆さんを受け入れる準備を整えています。ぜひ、口腔ケアの大切さを理解していただき、歯科疾患を進めないために歯科医院でのチェックも忘れないでください。
※本記事はIgAと新型コロナウイルスの関係性について直接説明しているものではありません。
略歴
1967年東京生まれ。1993年神奈川歯科大学歯学部卒業。1997年同大学大学院歯学研究科修了。歯学博士。同大助手、特任講師、助教授を経て2007年より教授。2013年より同大学大学院歯学研究科長。2014年より同大学副学長。専門分野は唾液腺健康医学・環境病理学。プレバイオティクスが唾液中IgAを増加し、そのメカニズムとして腸管内で短鎖脂肪酸が重要な役割を果たすことを明らかにし「腸―唾液腺相関」を発見。著書に『がん患者さんの口腔ケアを始めましょう』(学建書院)などがある。